彼・・・私の天使。
あれから一年
1
そして一月十九日。あの日から、ちょうど一年が過ぎようとしていた。私は仕事を終えてマンションに戻り
「きょうだったんだ……」
一年前を思い出していた。天使から離れたあの日を。
あれからたった一年。彼は役者として多忙な日々を送っている。今頃、撮影で大変なんだろう。
一人で食事してお風呂であったまって、もう眠ろうか……。
もうすぐ日付けも替わる。明日は天使と私二人の誕生日。
その時、静かな部屋に携帯の着信音、天使からだった。
「ごめん。遅い時間に……。今から行ってもいい?」
「うん。大丈夫よ。まだ起きてたから。待ってる」
まもなく天使が……。でも何だかいつもと様子が違う。
「どうしたの? 疲れてるの?」
「あの日から、きょうで一年経った。ちゃんとお礼を言おうと思って来たんだ。あなたが居てくれたから今の僕があるんだと思ってる。あなたに会う前の僕は事務所に所属していれば何とかなるって、この世界を甘く見てた。実際、何ともならなかったのに。塾のバイトもあったし生活にも困らなかったし、役者になる夢も忘れそうになってた。あなたに出会って今の劇団に入って、また一からやり直そうって本気で頑張ってドラマの役も貰えるようになった。全部あなたのお陰なんだ。本当に感謝してる」
「瞬君……」
「あの日、あなたが置いていったお金。手は付けてないから、きょう返そうと思って。内容証明まで僕の名前で出してくれて、あの手紙を読んで泣いたんだ、あの日。こんなに僕のことを考えてくれて思ってくれて支えてくれてるんだって……。絶対、役者として認められて、あなたを迎えに来るって誓った。心から感謝してる。ありがとう」
天使は私を抱きしめた。そのキレイな目には涙が光っていた。
「詩織さん。左手、出してくれる?」
「えっ?」
天使の言葉一つ一つに感動していた私は意味が呑み込めなくて、そっと左手を出すと天使が薬指にキラッと光るダイヤのリングをはめてくれた。
「エンゲージリング。あなたが僕のものだっていう証拠だよ。本当は、きょうプロポーズしようと思ってたんだけど、記者会見でああいうことになっちゃったから……」
「ありがとう……」
どれだけ考えてもそれ以外に言葉が見付からなくて……。