彼・・・私の天使。
2
「もう一つあるんだ。これは誕生日のプレゼント」
リングとお揃いの煌くダイヤのペンダントを私の首に着けてくれた。
「仕事の時はリングは、はめていられないでしょう? これだったら二十四時間ずっと着けてくれると思ったから」
「うん。ありがとう。すごく嬉しい」
私は天使の胸に顔を埋めて彼を抱きしめた。
「でも毎日忙しいのに、いつ買いに行ったの?」
「監督の友達が銀座で宝石店をしてて、閉店してから見せてもらったんだ。本当は一緒に見に行きたかったけど」
「とっても気に入ったから、ありがとう。でも私のリングのサイズよく分かったわね」
「お店で小柄で華奢で手も小さいって言ったら、八サイズか九サイズくらいだと思いますがって」
「うん。八サイズ、ピッタリよ」
「良かった」
「もうこれで逃げられないってことなのかな?」
「えっ? まだ逃げる気だったの?」
「ううん。羽があっても逃げない。ずっと傍に居るから」
「僕の傍に居たいって思ってもらえるように頑張るよ。詩織さんに嫌われないように」
「私、誕生日のプレゼント何も用意してないの。忙しそうだったし、きょう会えるって思ってなかったから。ごめんね」
「何にも要らない。あなたさえ居てくれれば僕は幸せだから。でも一つだけ今すぐ欲しいものがある」
「なに?」
「決まってるでしょ」
私は天使に抱き上げられて……。そして天使の腕の中で、これ以上ないほどの悦びに身を任せていた。愛しい天使の真っ直ぐな、あふれるほどの愛で何もかもが幸せで全てがミタサレテいた……。
「あなたの奥さんになるのよね私。仕事は辞められないけど、それでもいいの?」
「仕事は続けて欲しい。みんなの大事な社長さんでしょう? 何も変わらなくていいよ。僕の仕事は不規則だけど無理に合わせることないし。今まで通りで僕は充分幸せだから」
天使の主演ドラマは一話ごとに視聴率も上がって行き最終話はまたまた記録を更新した。
三月にドラマの放送が終わって、彼は次のクールはドラマは、お休みすることにした。
いくつかのお話は来ていたのだけれど、充電期間も必要だと考えていた。
五月には劇団の公演もあるし四月になれば稽古も始まる。前回よりもセリフも出番も多い重要な役にキャスティングされていた。
彼はこの舞台に全力で取り組もうと考えているようだった。