彼・・・私の天使。
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「まだ昔の事、引き摺ってるの?」
「そんなに執念深くないつもりだけど」
「言わないでいようと思ったんだけど、この前、銀座で見かけたわよ。たぶん奥様と高校生くらいの男の子と一緒だった……」
「そう。日本に居るんだ」
「気にならない?」
「別に、どうってことないけど」
「昔と変わってなかったわよ。息子さんかしらね。よく似てたから」
「はい。その話は終わり。それより二十五歳の彼、どこで知り合ったの?」
「大学病院の後輩よ。もう五年付き合ってる」
「えっ? じゃあ、二十歳の時から? 犯罪よ」
「そうかもね……。やっとインターンよ」
「何? 思い通りの男に育てようとか思ってる訳?」
「そう思った事もあったけど無理ね。思い通りにならないのよねぇ、これが」
「何かあったの?」
「別に何も無いけど、このまま続けても何の発展もなさそうっていうか」
「結婚とか考えてるの?」
「それは考えないようにしてる。負担なだけだもんね、私の存在が。それに一人でも生きて行けるし……」
「そうねぇ。変にゴタゴタ揉めるくらいなら一人の方が増しってね」
「やっぱりそう思う?」
「仕事があるからね。無かったら適当な所を見繕って可愛いお嫁さんに……なれそうもないわね……」
「やっぱり。あと二十年経って、お互い一人だったら一緒に住まない?」
「何? 私に家事やらせようって魂胆?」
「バレた?」
「バレバレ~」
「お抱えの医者ってどう? いいわよ」
「考えとく」
「私、泊まろうか?」
「いいけど、でも大丈夫よ。それに一緒に居ると一晩中喋ってそう」
「そうね。休めないわね。あっ、今夜、彼、来るんだったわ」
「何? それが言いたかった訳? はい、ごちそうさま。さっさと帰ったら?」
「何かあったら電話してよ」
「デート中に? 救急車呼ぶから安心して」
「絶対、呼ばないくせに。本当に電話してよ」
「うん。ありがと。彼によろしく」