彼・・・私の天使。
休養
1
玲子のマンションも、ここからそう遠くない。大学病院勤務の頃は忙し過ぎて今が一番人生楽しめてる気がすると言っていた。
昔から何をしても敵わなかった。でもそれが嫌じゃなかった。医者になるくらい彼女には容易い事だったような気がする。
同じ女としてカッコイイと思っている。信頼してるし尊敬してる。
それぞれ違う人生を歩いてきたけれど、また出会えて本当に良かったと思う。持つべきものは女友達よね。姉妹のいない私にとって姉であり妹であり、もしかしたら二十年後の同居人?
それもいいかもね。結婚だけが人生じゃないし、子供だけが生きがいじゃないし。
仕事は大切だけれど生活のためだけじゃなくて、仕事を通して何かを社会に還元出来たら。何か……それが、まだつかめないけれど。そんな事を考えながら眠ってしまっていた。
朝七時。携帯のアラームが鳴った。止めたと思ったら着信音。玲子からだ。
「おはよう。詩織、眠れた?」
「うん。今、起きたところよ」
「変わったことない? 頭痛は?」
「ないわよ。頭痛も、ほとんどないみたい」
「きょう一日は仕事は休みなさいよ。分かった?」
「分かったわよ。きょうは特に何も無いから休みます。ご心配なく」
「よろしい。患者は素直が一番。じゃあね」
風邪で休むって後で電話しよう。こんな事は滅多にないから、とりあえず二度寝。
みんなが働いている時にベッドでマッタリ。申し訳ないと思いつつプチセレブ気分。ウトウト眠ったり目覚めてボーッとしてたり。
いつも頑張っているんだからご褒美かな? プールで気絶してご褒美もないけれど。
きょう一日うだうだして、明日はシャキット仕事。人間、切り替えが大切よね。
晴れた午後の明るい部屋にメールの着信音。彼からだった。
『大丈夫ですか? 休んでますよね、仕事。元気な顔が見たいです』
返信……。
『ありがとう。元気よ! ゆっくり休んでます。また、お礼するからね』
心配されるって、とても幸せなことなのね。心の真ん中に、あったかいダイヤが生まれたみたい。きらきら輝いている、あったかい光。
それが何なのか分かっていなかったけれど。
さあ、シャワーでも浴びよう。もう充分休んだ。頭痛も、もう良さそうだし気分も良いし。プールの消毒の匂いを消してブルガリのオーフレッシュでも纏って。
香りが長持ちしたら文句なく満点のトワレなのに、すぐに飛んでしまうのが難点なのよね。香水フリークの私が唯一リピート買いしてる大好きな香り、優しい香り。この香りのような女になりたい。さりげなく優しく香ってスッと消えて行く。
仕事の時はもちろん使わないけれど……。
冬の寒い季節以外はシャワーの方が好き。汗も疲れも嫌な事も、みんな流してくれそうな気がする。