彼・・・私の天使。
2
車は高速に入って気持ち良く走り続けた。平日のお休みは何処へ行っても混んでいなくて遊びに行くには最適だと思う。一緒に行く誰かとスケジュールさえ合えば。
「ちょっと休憩しましょう」
車はサービスエリアへ。近頃のサービスエリアや道の駅って昔と違って、いろんな事が出来たり楽しめるようになったのね。
中には温泉に入れたりする所もあってサービスエリアへ遊びに行く人も多いらしい。平日でも小さな子供と一緒の家族連れや年配のグループなどで賑やかだったりする。
「こういう所に居ると旅行してるみたいな気分になるわよね」
「僕は日帰り旅行のつもりですけど。なんなら一泊旅行でも構いませんよ」
「明日は仕事です」
「そうですよね。さあ、行きましょうか?」
休憩して美味しいアイスコーヒーで喉も潤してドライブの続き。
日帰り旅行? 一泊旅行なんて冗談、真に受けたりしませんよ。
若い子なら「きゃあ、止めてください。そんな冗談」なんて騒ぐのかしら。四十路女が、そんな事言っても可愛くないでしょ。
まっすぐ前を見て運転しながら瞬君が、
「さっき言ったのは、冗談なんかじゃないですよ」
「えっ?」
思わず天使の横顔を見てしまう。
「あなたと一泊旅行がしたいって言ったこと」
「それはどうして?」
「あなたと一緒にいると落ち着けるんです」
「お母さんとか歳の離れたお姉さんの感覚でしょ?」
そう。そうに決まってる。
「あなたのこと好きになったみたいです」
言葉が出なかった。まさか、きょう天使に告白されるなんて思ってもいなかったから。
「先週、あなたの声が聴きたいと思って携帯にかけたら、お友達の女医さんがプールで事故があって気を失ってるって。とにかく顔が見たくて心配で。ベッドで点滴されてて顔色も悪くて……。早く目を覚まして欲しくて名前を呼んでました」
「あなただったの? あの時、夢を見てたの。暗い洞窟に入ろうとしたら誰かが呼ぶ声が聞こえた。それで目を覚ましたの。後で玲子に言われた。洞窟に入ってたら戻って来られなかったかもしれないって。あなたは命の恩人なんだ」
「そんな大袈裟な。でも良かった本当に」
「瞬君、あなたのことは好きよ。でも恋愛感情じゃないの。弟みたいな、今はそんな気持ちだから」
「良かった。嫌いだって言われたらどうしようって。いつか男として認めてもらいますから。それまで待ちます。それも迷惑ですか?」
「迷惑なんて……。ありがとう。嬉しいのよ。でも……」
「でも何ですか? 歳の差ですか? 関係ないです。僕はあなたが好きなんです。一人の女性として見てました。もしあなたが誰かのものでも好きになってました。でもそうじゃなくて僕は感謝しましたよ。それとも他に好きな人がいるんですか? それでも僕は諦めませんから」