彼・・・私の天使。
3
「そんな人いないわよ。今は仕事が恋人だから」
「ずっと仕事だけで、いいんですか?」
「仕事は裏切らないから。努力した分、返ってくる。人は変わるのよ。いい意味でも悪い意味でも。あっ、海がきれい。シリアスな話はおしまい。先のことは誰にも分からないでしょ? でも、ありがとう。あなたの気持ちは嬉しい」
「望みはあるんですね。それだけ分かれば充分です。思っていた事、全部言えたから僕は満足です」
「お腹、空かない? 何か食べに行こう。苦手なものは? 食べられないものある?」
「母が厳しかったから好き嫌いは、あまりないですよ」
「そう。素敵なお母様ね。感謝しなきゃね。じゃあ、お肉食べに行かない? メディアには、あまり紹介されてない隠れた銘品があるの。ステーキ? 焼肉? どっちがいい?」
「じゃあ、ステーキで」
「ここからなら三十分くらいで着けると思うけど」
「はい。どっちですか?」
ナビに地名を見つけて
「あっ、ここ。このあたりにあると思うけど」
「分かりました」
車は三十分ほど走って、お店を見つけ無事到着。
「こんにちは」
「やぁ、いらっしゃい。久しぶりですね」
「一年振りくらいかしら、お店に寄らせてもらうのは」
「お友達のお医者様は、お元気ですか?」
「玲子ですか? ええ、彼女はいつも元気です」
このステーキ・ハウスのオーナーの実家が牧場をしていて、いつもそこから美味しい牛肉を仕入れさせてもらってる。
だから私のお店のステーキは、ここのと同じく美味しい。
お肉の焼ける良い匂い。早速ステーキを頬張った。
「瞬君、お味はどう?」
「美味しいです。さすがプロの選ぶお店は違いますね」
「ありがとうございます。良かったら牧場の方にも行かれたらどうですか? 親父が喜びますよ。あなたのファンですからね」
「どうする?」
「僕はいいですよ。牧場って行ったことないし興味あります」
「じゃあ、寄らせてもらいます」
「親父に電話しときますよ。喜ぶだろうなぁ」