彼・・・私の天使。
2
お散歩から帰ると、とても賑やかな光景が広がっていた。
この牧場は獣医大や農大の学生さんを受け入れていて、いつも若い研修生でワイワイガヤガヤ。
きょうも野外バーベキューが始まったらしい。
「さあ、お二人も一緒にどうぞ」
「あっ、でも申し訳ないですから」
「何言ってるんですか。お二人くらい増えても変わらないですよ」
お言葉に甘えて……。甘え過ぎ? 夕食のバーベキューまで、ご馳走になってしまった。ビールだワインだと大騒ぎ。
「あっ、僕は運転があるので」
と言う瞬君。
で、私が二人分? 飲まされてしまった。自分で言うのも何ですが結構強いつもりだったけれど、大学生の若さには敵いません。
「もう無理です。帰れなくなっちゃいます」
「泊まる部屋くらい、いくらでもありますよ」
そう言って社長は笑ってる。瞬君は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。あなたが天使に見えるけど……」
「そりゃ、ダメですね」
って笑ってる。
こんなに飲んだのは久しぶり。やっぱり年かなぁ……。
夏の終わり。緑の上を渡ってくる風が心地好い。少し休ませてもらってそろそろ帰らないと。
「ありがとうございました。お陰で楽しかったです」
「また、いつでも来てください。彼と一緒に。待ってますよ」
「ありがとうございます。ごちそうさまでした」
「本当に顔を見せに来てくださいね。楽しみにしてますよ」
「お二人とも、お体に気を付けて、お元気で」
車まで送ってくださって見えなくなるまで手を振って……。
「良いご夫婦ですね。あっ、眠って良いですよ。まだ時間かかりますから」