彼・・・私の天使。
面接
1
翌日、受験に出かけた息子を心配する気持ちって、こんな感じなのかなぁ。何だか仕事が手に付かない。あんな偉そうなこと言ったのに。
きょうは特別大切な方の予約も入ってないし、取引先にアポも取ってない。
通常営業だから余計にフッと天使がチラつく。チラついてるのは私じゃないの。自分にツッコミ。
パティシエの子が
「あの、社長。何か心配事でもあるんですか?」
「どうして?」
「何か、きょう変ですよ」
「えっ? 注文ミスでもあったかしら」
そんな覚えはないけれど……。
「いいえ。それはないですけど何か、心ここにあらずっていうか……」
「何にもないわよ。ありがとう。心配してくれたの?」
「女の子達が言ってましたよ。社長が恋してるんじゃないかって」
「えっ? 何言ってるの。ところで優秀なパティシエさん、冬の新しいスイーツの構想は出来てるのかしら? 結婚シーズンが過ぎたらクリスマスですよ」
「ええ。大まかにですけど、期待しててください」
家のパティシエさん。スイーツ・コンテストで何回も入賞、優勝までしてる。
独立して、お店を構える気はないの? と聴いたら、いずれはそうするにしても、まだこの店のパティシエとして働きたい。そう言ってくれた。
それに後輩を育ててからじゃないと安心して辞められないとも。
お客様から、お持ち帰りは出来ないんでしょうか? とよく聴かれて時間の余裕がある時だけショーケースに並べてみたら、即完売。
スイーツ目当てのお客様も多いらしいんです。とにかくスタッフには本当に恵まれている。感謝の日々。
しかも私の事まで気に掛けてくれて、ごめんね。真面目に仕事します。
しかしやっぱり女の子は侮れない。女の勘、鋭いっ。
社長! もうちょっと気を引き締めて、はいっ!
有能なスタッフに支えられて、きょうも仕事が終わる。お疲れさまでした。