彼・・・私の天使。
女二人の年越し
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翌日、大晦日。朝から掃除をして早めに、お買い物。お鍋の材料。何のお鍋にしようかな? 水炊き? キムチチゲ? カニすき? すき焼き? 四日間、毎日お鍋? お正月から買い物にも行きたくないし全部お買い上げ。もしかしたら天使が来るかもしれないし……。ビールも買っておこう。彼女、飲むのよねぇ。すごい量。重かった……。
ご飯も少し炊いてシメのお雑炊用? お鍋もちょうど食べ頃、ビールも冷えてる。そろそろ来る頃かな? チャイムの音。玲子だ。
「こんばんは」
「いらっしゃい、支度出来てるわよ」
「う~ん、いい匂い。カニすき?」
「当たり」
「ワイン買ってきたよ。白」
「うん。ぴったりね」
「だって詩織、白しか飲まないでしょ?」
「だって赤って血生臭くない?」
「そんなこと言ってたら、医者は務まらないの」
「そうでした」
「お店で赤ワイン出してるんでしょ?」
「もちろんよ」
「それでも慣れないの?」
「見た目は綺麗だし香りも嫌じゃないけど味がダメ」
「困ったレストラン・オーナーねぇ」
「誰だって苦手なもの、あるでしょ?」
「私はないわよ」
「うん? 何かあったでしょ? なんだっけ?」
「あ~ん、もう早く食べよう。冷めちゃうわよ」
「思い出した。納豆」
「やめて、せっかくのカニすきが……」
「大丈夫、納豆は入ってないから。さぁ、ワイン開けよう。ワイン・オープナーどこだっけ?」
「カンパ~イ! さぁ食べよう。美味しそう。いただきます。……美味しい。本当、料理上手いわよねぇ」
「ありがと」
「どうして嫁に行けないかなぁ?」
「余計なお世話」
「そういえば、あの坊や元気?」
「元気よ。塾の講師してるから、お正月も休みなしだって」
「そっか。受験の季節よねぇ。思い出すわ」
「そうとう勉強した?」
「うん。まあね」
「インターンの彼は元気?」
「きょう仙台へ帰ったわ。大きな総合病院のお坊ちゃま」
「へぇ、そうなんだ」
「お見合いの話があるみたいなの」
「えっ? いいの?」
「良いも悪いも私が決める事じゃないし」
「でも……」
「覚悟はしてたから。そろそろ別れ時?」
「五年も付き合ってきて、それでいいの?」
「仕方ない事だってあるのよ」
そうか。それで一緒に年越し。一人で居たくなかったのね。男っぽくてサバサバしているように見えても女なんだ。彼女も……。