彼・・・私の天使。
2
一月二日。朝から、なんだか頭痛がするなぁ。お休みだと緊張感なくて、ゆったりし過ぎて良くない。
午後三時頃に天使からメールが来た。
『今夜帰れます。八時頃になるけど、お鍋楽しみにしてます』
約束したものね。すき焼きかな?
『待ってます。気を付けてね』
天使は八時ちょっと過ぎに帰って来た。
「美味しそう。すき焼きなんて久しぶり」
嬉しそうな瞬君。
「たくさん食べてね。ビールもあるけど……」
「あっ、いいです。お腹空いてるから」
「じゃあ、ご飯、持ってくるね」
美味しそうに食べてくれる天使の顔、好きだなぁ。ちゃんと口を閉じて頬張ってる顔、食欲旺盛な男の子って感じが。
時々上目遣いに「ん?」って言ってるような顔が可愛くて、ちょっと見惚れた。
「食べないんですか?」
お肉を頬張りながら訊く。
「なんか、お腹空かなくて」
「お餅でも食べ過ぎたとか?」
「そうかもね」
「僕が全部食べちゃいますよ」
「いいわよ。食べちゃって」
気持ち良いくらいガッツリ食べてくれて。
「もう食べられない。美味しかった。ごちそうさま」
「どういたしまして」
二人で食事の後片付けをしていたら彼の携帯が鳴った。
「はい。…………。あっ、はい、分かりました」
彼は携帯を切って
「明日、数学と英語が入れ替わって、僕の授業がなくなって休みになりました」
「本当に? 久しぶりのお休みよね」
瞬君がゆっくり出来るのは嬉しい。
「お店、明日までお休みですよね?」
「うん。そうだけど」
「明日、一緒に名古屋へ行きませんか? 詩織さんを家族に会わせたいと思って」
「えっ? でも……」
なんだか目眩がしてふらついた。
「どうしたんですか?」
天使が抱き抱えてくれた。
「体、熱くないですか? 熱があるみたいですよ」
「今朝から頭痛がしてたんだけど……」
「休んだ方が良い」
彼は、そのまま私を抱き上げてベッドまで連れて行ってくれた。
「風邪かもしれない。移るといけないから、瞬君はもう帰った方が良いと思うけど」
「じゃあ、ちょっと出てきます」
天使は、どこかへ出て行った。まもなく帰って来て
「これ一番良く効く風邪薬だそうです。それとマスクが二つ。二人がマスクしてれば移りませんよ」
「でも明日せっかくの久しぶりのお休みでしょう? したい事たくさんあるんじゃないの? 私は寝てれば治るから。名古屋のご両親に顔見せに行ってもいいし、貴重な時間を自分のために使って欲しいの」
「今、僕が一番したい事は、詩織さんの傍に居ること。あなたと過ごす時間が一番大切なんです。良いですよね? ここに居ても……」
「ありがとう……」
本当は嬉しかったけど……。
「じゃあ、薬飲みましょう。水持って来ます」
私は熱と薬のせいで眠っていた。彼には、お風呂も入れるようになっているし冷蔵庫の中も好きにしていいからと伝えてあった。
どれくらい眠ったんだろう。目を覚ますと天使がベッドの端に腰掛けて心配そうに私を見ていた。
「シャンプーの匂いがする」
「今、お風呂に入ったから」
「ちゃんと髪、乾かしたの?」
「この前、詩織さんに叱られたから乾かしましたよ」
「薬のせいで汗かいたみたい。着替えたいんだけど……」
「手伝います」
「ダメっ。タオル取って来てくれないかな? 洗面台の左側の棚にあるから」
汗でベタベタしてた体が着替えて気分もスッキリした。
「もう、いいですか?」
「いいわよ。今、何時かしら」
「一時を過ぎたところです」
「疲れて眠いでしょ? ここで眠る?」
「ソファーで寝ようと思ったんだけど、やっぱりここが良い」
結局、私は天使の腕の中で眠った。