彼・・・私の天使。
2
食器を片付けて、彼女に風邪薬も飲ませて
「じゃあ、行ってきます」
って言ったら部屋のカギを渡された。
「薬のせいで熟睡しちゃうからカギかけて行ってくれる?」
玄関のカギをかけてポケットにしまう。コンビニに寄って買い物。マンションに戻って洗濯機を回しながら掃除、明日の授業の資料を揃えて、乾燥機に洗濯物を放り込む。
何か食べたいものがないか聴いてくれば良かった。今頃ぐっすり眠っているんだろうなぁ。早く治ってくれないと明日から仕事だから、彼女が辛いから。
キレイな寝顔を思い出して、とても幸せな気持ちになる。愛してるって言葉、何万回言っても、たぶん足りない。
さぁ、彼女の部屋に戻ろう。途中スーパーに寄って何か買って行こう。詩織さん、何が好きなんだろう? 体調が悪くても食べられるものって何だろう? 考えてみたら知らないことばかり。
彼女は、いつも僕の話は楽しそうに聴いてくれるけれど、自分のことはあまり話さない。
彼女が笑顔で傍に居てくれるだけで充分だったから。彼女の華奢な体を抱きしめるだけで幸せだったから。彼女のやわらかな白い肌を一人占めする悦びを感じていたから……。
もう誰にも渡さない。彼女は僕が必ず幸せにするから。
そうだ。フルーツなら……。真っ赤なイチゴを買って行こう。
彼女のマンションに戻りカギを開ける。そっと起こさないように部屋に入ってイチゴを冷蔵庫に入れ、彼女のベッドへ。よく眠ってる。
渡されたカギ、このまま持っていよう。返して欲しいと言われるまで。
僕を男として認めてくれている。信頼してくれている。素直に嬉しかった。