彼・・・私の天使。
愛し合う二人
1
一月四日、朝。きょうから彼女は仕事。僕は、きょうは夜の塾のバイトだけ。二人で目覚めて彼女の作る朝食を食べ彼女は出勤。僕も一緒に部屋を出る。
マンションに戻って僕も着替えて、昼食を済ませてからスポーツジムへ行ってみることにした。ささいな事なのかもしれない。でも気になって彼女の親友の女医の先生を訪ねる。
受付で
「専属の女医の先生に、お会いしたいんですが……」
と言うと
「お名前は?」
と聴かれ
「藤島ですけど……。名前を言っても先生は、ご存じないかと……」
受付の女性に怪訝な顔をされた。仕方ないか……。少し待つと先生が受付の女性と話して笑顔で僕の方に歩いて来た。
「受付の子が、かなり怪しんでたわよ」
「すみません。お名前を存じ上げなくて。ちょっと伺いたい事があって」
「お茶でもしようか」
とジムの喫茶室へ
「コーヒーでいい?」
「はい」
「コーヒー二つね。で? 何かあったの?」
「いえ。そういう訳じゃないんです。考え過ぎかもしれないんですけど……」
「だから、何?」
「僕が昔の話とかすると楽しそうに聴いてくれるんです。でも彼女、自分のことは、ほとんど話してくれてないような気がして」
「それ、どんな話?」
「高校時代の初デートの話とか……」
「そうか。それは無理ね。詩織、君に何も話してないの?」
「あぁ、婚約破棄のことは聴きました。でも詳しい話までは……」
「そっか、話したんだ。その婚約してた人、一歳年上の彼女の幼なじみなの。親同士が親友で小さい頃からずっと一緒だった。学校は別々だったけど家族ぐるみで付き合ってて。私は彼女と幼稚園から中学まで一緒で家も近かったから高校大学は違ったけど時々会って話したりしてた。高一の時、告白されて付き合うようになって人も羨むカップルだったのよ。美男美女でね。大学の時、彼はアメフト部のキャプテンで小柄な彼女をエスコートする姿が微笑ましかったわ。そのまま何の障害もなく彼女が卒業するのを待って婚約。彼は父親の仕事で海外赴任になって二年で帰って結婚だったのに、赴任先の通訳だったか秘書だったかの女性と赤ちゃんが出来て、それで一方的に婚約解消されたらしい」
「そんな……。酷い」