彼・・・私の天使。
3
ドアが開く。変わらない彼女の笑顔。部屋に入って直ぐに抱きしめた。
「どうしたの? 何かあった?」
「何も。あなたが欲しいだけ」
「風邪の病み上がりなんですけど……」
「まだ体、辛いの?」
「ううん。そんなことない」
僕は彼女のやわらかな白い肌をやさしく責め続けた。このまま溶けてしまいそうなほどの悦びを感じていた。
一月五日。この部屋で朝を迎えるのは何度目だろう。目覚めた時に腕の中に彼女が居ることが、とても自然で、この上もなく幸せだと感じていた。
もしも彼女を失うようなことになったとしたら、考えただけで怖かった。そんなこと有り得ない。心の中で呟いて……。
「もう起きてたの?」
彼女が目を覚ました。まだ眠そうだ。
「うん。疲れたの?」
僕が聴いた。
「どうして?」
不思議そうな顔。
「昨夜、僕の腕の中で、あんなに……」
たまらなく色っぽかったよ。
「恥ずかしいから言わないで」
その困った顔が可愛すぎる。
「誰も聴いてないよ」
そう。僕だけのもの。
「私が聴いてる……」
その上目遣い反則だ。
「さぁ、もう起きようかな」
「まだ外、真っ暗だよ」
もっとこのままで居たいのに……。
「すぐに明るくなるわよ。食事も作らないといけないし、メイクもしないと」
「スッピンの方が好きだけどなぁ」
「ありがとう。でも仕事に行くのにスッピンって訳にはいかないの。きょうから劇団とバイトで、また忙しくなるんでしょ? しっかり食べて頑張らないと」
「うん。今夜は来られないかも。受験の方も追い込みだしね」
「来られない時はメールくれる?」
「うん。そうする」
何度目? のモーニングコーヒーと朝食を済ませ、一緒にマンションを出た。