彼・・・私の天使。


 年末年始五日間のレストラン休業日の後に、年が明けて営業二日目。

「どうしても、ここの料理長の作る料理が食べたくて来たよ」

「お正月も営業してもらいたいくらいだね」

 そう言ってくださるお客様がいてくれる。きょうも、お陰さまで忙しく、たくさんのお客様に喜んでいただけて、この仕事に誇りを持てることが何より嬉しい。

 きょうの営業は終了。お疲れさま。マンションに帰って、お風呂。食事も済ませてソファーでつい、うたた寝。
 気が付いた時には、もう十一時を過ぎていた。

 きょうは、やっぱり天使は忙しいみたいね。メールも来てないけど心配するほどの事でもないのかな……。

 翌日も、その次の日も天使からはメールすら来ない。どうしたんだろう。いくら何でも心配になって来て携帯に掛けてみた。出ない……。



 きょうは定休日。朝、天使が劇団に出かける前にマンションを訪ねた。チャイムを押す。しばらくしてドアが開いた。

「…………」

「入っていい? それとも、もう出かける時間?」

「まだ時間あるから……」

「じゃあ、おじゃまします」
 部屋に入って

「どうしたの? 何かあったの? メールもくれないから心配したのよ」

「ごめん……」

「何があったのか話してくれないの?」

「あなたに心配かけるから……」

「何の連絡もなくて心配してないとでも思ったの? ちゃんと話して。何があったの?」

「ごめん」

 彼は劇団での事、前の事務所での事をやっと話してくれた。

「そう。分かったわ。前の事務所の連絡先分からない?」

「あぁ、どこかに名刺が……」
 机の引き出しの中から
「これ……」

「この人が社長なのね? 君の力になれると思うから。じゃあ」

 彼のマンションを出た。携帯を出して電話をかける。

「先生? 佐伯です。ご相談したい事が……。はい。分かりました。今から伺います」
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