彼・・・私の天使。


「ごめんね。子供みたいよね」

「どうしよう。女医先生に叱られる。あなたを泣かせて……」

「大丈夫よ。黙っててあげるから」
 私は笑顔を作って言った。
「顔、洗って来る」

 鏡に映った自分の顔を見て、たった今、出した結論が間違っていないと確信していた。



「泣いたらお腹空いちゃった。何か作るね。食べるでしょ?」

「うん」

 オムライスを作って二人で食べて

「美味しい」
と瞬君

「そう? 食べたら出掛けたいんだけど。買い物、付き合ってくれない?」

「いいけど……」 

「じゃあ、決まりね」

 ずっと二人とも忙しくて、お休みも擦れ違いで一緒に買い物もしたことなかった。初めて二人でデパート。
 仕事用のスーツを二点、今着られる物と春物とを天使に選んで貰って。
 まだまだ寒いから天使にマフラーをプレゼント。ついでに私も色違い。
 それからデパ地下で美味しそうなケーキをたくさん買って。

「ねぇ、こんなにたくさんのケーキ誰が食べるの?」

「君に決まってるでしょう?」

「ええっ? メタボな新人俳優なんて使って貰えないよ」

「和菓子屋さんのお坊ちゃまが何言ってるの?」

「別に甘い物が好きだから和菓子屋に生まれた訳じゃないよ」

「半分は私がいただきますから」

「どこに入るの? その細い体の?」

「別腹って本当にあるって知ってた? 早く帰って食べよう」

 マンションに帰って

「コーヒー? それとも紅茶がいい?」

「きょうは紅茶かな? う~ん、これ美味しそう」 
 ベリーがたくさん乗ったレアチーズタルト。

「じゃあ私はこれ……」
 フルーツたっぷりのミルフィーユ。
「本当、美味しい」

 甘いものを食べると幸せな気持ちになれる。お腹も満たされて、気持ちも満たされて……。
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