彼・・・私の天使。
2
「ごめんね。子供みたいよね」
「どうしよう。女医先生に叱られる。あなたを泣かせて……」
「大丈夫よ。黙っててあげるから」
私は笑顔を作って言った。
「顔、洗って来る」
鏡に映った自分の顔を見て、たった今、出した結論が間違っていないと確信していた。
「泣いたらお腹空いちゃった。何か作るね。食べるでしょ?」
「うん」
オムライスを作って二人で食べて
「美味しい」
と瞬君
「そう? 食べたら出掛けたいんだけど。買い物、付き合ってくれない?」
「いいけど……」
「じゃあ、決まりね」
ずっと二人とも忙しくて、お休みも擦れ違いで一緒に買い物もしたことなかった。初めて二人でデパート。
仕事用のスーツを二点、今着られる物と春物とを天使に選んで貰って。
まだまだ寒いから天使にマフラーをプレゼント。ついでに私も色違い。
それからデパ地下で美味しそうなケーキをたくさん買って。
「ねぇ、こんなにたくさんのケーキ誰が食べるの?」
「君に決まってるでしょう?」
「ええっ? メタボな新人俳優なんて使って貰えないよ」
「和菓子屋さんのお坊ちゃまが何言ってるの?」
「別に甘い物が好きだから和菓子屋に生まれた訳じゃないよ」
「半分は私がいただきますから」
「どこに入るの? その細い体の?」
「別腹って本当にあるって知ってた? 早く帰って食べよう」
マンションに帰って
「コーヒー? それとも紅茶がいい?」
「きょうは紅茶かな? う~ん、これ美味しそう」
ベリーがたくさん乗ったレアチーズタルト。
「じゃあ私はこれ……」
フルーツたっぷりのミルフィーユ。
「本当、美味しい」
甘いものを食べると幸せな気持ちになれる。お腹も満たされて、気持ちも満たされて……。