彼・・・私の天使。
兄弟

1


 四月に入って春の結婚シーズンが始まった。これから六月のジューンブライドまで忙しい日が続く。
 幸せいっぱいな新しい人生のスタートをお手伝い出来るんだから、大変でもスタッフも、みんな笑顔で頑張ってくれる。

 マンションに帰って、きょうも素敵なカップルだった。新婦とっても可愛かったなぁ。
 私まで幸せな気分に浸っていたら携帯の着信音。
 えっ? 天使から? 

 あれからメールは毎日のように来ていたけれど着信は初めて。
「はい」

「僕です。瞬です。今マンションに帰って来ました」

「おかえり」

「声、聴きたかった、ずっと。でも我慢してました。ちゃんと報告出来る何かがあってからにしようって決めてたから。七月からのドラマ決まりました。きょう台本をもらって来週顔合わせで、来月から撮影に入ります。もしもし……。聴いてますか?」

「うん。聴こえてる……。おめでとう」

「ありがとう。頑張るから、役者として認めてもらえるように」

「これから始まるのね。頑張って」

「声、聴いたら会いたくなっちゃった」

「そんなこと言わないで。お祝いしてあげたいけど……。そうだ。お店に食事に来ない? ディナーに招待するから」

「えっ? いいの?」

「レストランに食事に来るくらい平気でしょう? でも一人じゃダメよ。お友達か、どなたかと一緒に。どう?」

「分かった。絶対に行きます。詩織さんに会えるんだね」

「でも特別扱いはしないわよ。お客様としてだからね」

「それでも、あなたに会えるんだから。すごく楽しみ」

「来られる日が決まったら、また電話して」

「はい。じゃあ、おやすみなさい」
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