彼・・・私の天使。
2
三ヶ月ぶりに聴く彼女の声。彼女のマンションは、すぐそこ。会おうと思えば何時でも会える距離なのに、まるで遠距離恋愛みたいだ。
こんなこともあったと何年か後に懐かしく思い出せる日が来るよね。
携帯に着信。珍しい。名古屋の兄貴から。
「はい」
「おう、俺だ。元気か?」
「元気だよ。どうしたの?」
「来週そっちに行くから仕事で」
「来週のいつ?」
「水曜に着いて二泊して金曜には帰る。ホテルは取ったから」
「水曜は何時頃に着くの?」
「夕方五時には着けると思う」
「水曜なら僕も空いてるし晩飯奢るよ。ホテルに迎えに行くから」
「分かった。待ってるから、じゃあな」
そして水曜。彼女のレストラン。
「えっ? こんな高級レストラン大丈夫か?」
「大丈夫だよ。招待されてるんだ」
「何でまた、お前が?」
「いいから、いいから……」
お店に入って彼女がすぐに気付いてくれた。あの時、僕が選んだスーツ良く似合う。やっぱりキレイだ。
「いらっしゃいませ。ご予約承っております。どうぞこちらへ」
「ありがとう」
「本日は料理長のおすすめコースで承っておりますが宜しいでしょうか?」
「はい」
「かしこまりました」
彼女は厨房へ……。
「綺麗な人だな。東京は本当に美人が多い。女優さんだって言われても納得するなぁ」
「彼女、ここのオーナーだよ」
「えっ? あんなに若くて綺麗な人が?」
「あぁ」
そういえば詩織さんが、お店で働く姿、初めて見る。仕事の出来る女性。長い髪は、きちんとまとめて、いつもと感じが違う。でもやっぱりキレイだ。僕だけの大切な人。
「ワインも料理も最高に美味しい」
「うん。満足してくれた?」
「お前が、こんな素敵な店を知ってるなんて思わなかったよ」
「じゃ、そろそろ行こうか?」
席を立つと彼女がすぐに気付いて来てくれた。
「ありがとうございました。お会計は済んでおりますので。またのお越しをお待ちしております。お気を付けて」