彼・・・私の天使。
3
レストランを出て兄貴と二人でタクシーの拾える場所まで歩いた。
「彼女をどう思う?」
「彼女って……。さっきのレストランのオーナーのことか?」
「今、一番大切に想ってる人なんだ」
「それは片想いとかじゃなくて付き合ってるって意味か?」
「うん。でもきょう会うの三ヶ月ぶりなんだ。さっき話したドラマが決まりそうになった時に会わない方がいいって。スキャンダルになるといけないって」
「彼女がそう言ったのか?」
「うん。僕が役者として一人前になるまで待ってくれてるんだ」
「美人で仕事が出来るだけじゃなくて、お前を支えてくれてるんだな。素晴らしい人を見付けたな。お前が羨ましいよ」
「じゃあ、賛成してくれる?」
「反対する理由があるか?」
「彼女、年上なのを気にしてるんだ。関係ないのに」
「年上だなとは思ったけど、いくつ上?」
「十三歳。でも僕は彼女以外には考えられない」
「お前が良ければいいんじゃないか。俺は応援するよ」
「ありがとう」
タクシーがつかまり乗り込んで
「問題は母さんだなぁ……」
と兄貴。
「うん……」
「父さんは美人に弱いから何とでもなるとして、母さんは手強いぞ。でもいざとなったら、お前も大人なんだし、さっさと籍、入れちゃえ」
「うん。でも家族に祝福してもらいたいんだ。彼女お父さんが亡くなってお店を継いで、お母さんは病気で兄弟もいなくて一人なんだ。だから僕の家族みんなに認めてもらいたい。家族を増やしてあげたい」
「そうか。そういえば母さん六月だか七月に同窓会で来るって言ってたぞ。きょうの俺みたいに黙って食事に連れて行ってみたら? とりあえず会わせて、その反応を見てから考える」
「その頃、僕が忙しくて母さんを連れて行けるかどうか分からないけど」
「そしたら俺が何とか理由を付けて一緒に来て連れて行くっていうのは?」
「えっ? いいの? 兄貴だって忙しいだろ」
「あの料理とワインを楽しめるなら喜んで。おまえの奢りな?」
「えっ?」
「嘘だよ。専務を見くびるな。次期社長だぞ」
「うん。じゃあ僕が都合つかなかったら頼むよ」
「任しとけ。あぁ楽しみだな」
タクシーでマンションまで送ってもらい
「また電話するから。仕事、頑張れよ」
「うん。じゃあ、ありがとう」