彼・・・私の天使。
天使の仕事
1
七月も終わって八月も過ぎて行き九月。
天使はドラマの撮影でスケジュールには一日の休みもなく最終話に向けて超多忙な毎日を送っていた。待ち時間にメールをくれるけれど電話をかける時間もないらしい。マンションに帰るのはほとんど朝方。
こんな暑い季節の強行スケジュールで体は大丈夫なんだろうか? ちょっと心配ではあるけれど……。
そういえば天使と会うようになったのは去年の今頃九月だった。
一年しか経っていないのに彼の生活は百八十度違ったものになっていた。夢を叶えたと言えば確かにそうだけど。
私は一年前と変わることなく仕事をしていた。
そんな九月のある日。朝起きたらメールが来ていたことに気付いた。天使から、しかも夜中の二時過ぎ……。
『やっとクランクアップしました!! これから皆で飲みに行きます!!』
お疲れさま。もう帰っているのか、もしかして盛り上がってまだ騒いでる? とにかく無事初めての大役を終えて安心しているんだろうなと思った。
ところがその翌日のスポーツ紙に『深夜の密会!! 熱愛発覚!!』
そこには天使と共演の女優さんの写真が載っていて……。出勤前に何げなく見ていたテレビの芸能ニュースで報道されていた。
私はコーヒーカップを持ったまま一瞬固まっていた。まもなく携帯の着信音。天使から。
「はい。おはよう」
「おはよう。テレビ見た?」
「うん。見てたけど」
「あれは違うんだ。二人だけで写ってるけど、あの周りには監督もスタッフも他の俳優さんも全部で十五人くらいで飲みに行ったんだから。僕メールしたよね昨日。あの時なんだ」
「そう」
「怒ってる?」
「君の言う通りなら怒る必要ないでしょう?」
「ほんとに?」
「ほんとうに」
「良かった。今、寝てたのを兄貴の電話で起こされて。お前テレビに出てるぞ。深夜の密会って何やってるんだって」
「怒られたの?」
「うん。すぐあなたに電話しろって」
「えっ? どうして私に?」
「あっ、ごめん。実は、あなたのお店のディナーに一緒に行ったの僕の兄貴なんだ。ごめん。黙ってて。兄貴には、あなたのこと話した。僕が一番大切に想ってる人だって」
「どうして教えてくれなかったの?」
「僕の家族に会うの気が進まないみたいだったから。でも兄貴は賛成してくれたよ。僕たちのこと応援するって僕が羨ましいって言ってくれた」
「そうだったの」
「ごめんね。僕がこの仕事をしてる限り、またいつ何を書かれるか分からないけど僕を信じてくれる? 僕の言うことだけを信じて欲しい」
「うん。分かってる。信じてるから。でも一つだけ約束して。嘘はやめてね。本当のこと教えて欲しい」
「約束するよ。あっ、ねぇもう時間じゃないの?」
「えっ? あぁ本当だ。支度しなきゃ。きょうは何の仕事?」
「きょうは次のドラマの打ち合わせなんだ」
「そう。頑張って。体、気を付けてね。じゃあ」
「うん」
大急ぎで支度して出勤。