彼・・・私の天使。
3
天使を送り出して静かな部屋。一人が寂しいなんて考えたこともなかったのに。
さぁ、私も支度して出掛けよう。初めて天使の演技を間近で観られるのね。
マンションを出て開演時間三十分前、開場時間には到着。もう既に何人かの方が待っていた。
そういえば久しぶりの劇場。あの頃は毎週のように劇場通いしていたのに。
そう。天使とは劇場で出会ったんだ。やっぱり劇場、演劇とは縁があったってことなのね。指定席に座ってそんなことを考えていた。
開演時間になった。客席は、ほとんど埋まり、お芝居が始まった。
天使の出番。舞台の上で演じる彼を初めて観た。劇団員の中で一人浮く事もなく、とても馴染んで、でも彼は確実に輝いて見えた。
きっと天職なんだろう。そう思えた。出番は決して多くはなかったけれど彼の役柄が目に焼き付いた。
お芝居が終わってマンションに帰っても鳴り止まなかった歓声と拍手が聴こえる気がした。その時、天使から着信。
「どうだった? お芝居」
「素晴らしかった。とっても」
「舞台から見えたよ。九列目のあなたが。白いジャケット着てたでしょう?」
「本当に見えたんだ」
「今、スタジオの駐車場。もう時間だから行くね」