彼・・・私の天使。
3
マンションに帰ってシャワーを浴びて、天使がご両親に言っていた言葉を思い出していた。
「それでも僕は彼女と一緒に生きて行くから」
そこまで考えてくれていたことを知って正直驚いた。嬉しかったし幸せだと思った。
何よりも今まで知らなかった彼の男らしい一面を見せられた気がした。お母さまも甘えん坊だと言われていた普段は子供っぽい可愛い寝顔の天使が……。
いつの間にか午前零時を過ぎていたけれど予想もしていなかった出来事に眠れそうもなくてソファーにもたれたままボーッとしていた。
そこへ着信音、天使から
「起こしちゃった?」
「ううん。まだ起きてたから大丈夫よ」
「行ってもいい?」
「うん。待ってる」
しばらくしてチャイムの音。ドアを開けて部屋に入って来た天使の変わらない笑顔に思わず彼に抱きついていた。
しっかり抱きとめてくれて
「どうしたの? 何かあった?」
「あなたのご両親と、お食事して来たの」
「えっ? 本当に?」
「うん。ぜひ名古屋にも遊びに来てくださいって」
「そうか……。ごめんね。きょうのこと黙ってて。来てくれるかどうかも分からなかったし、もしも家の親が詩織さんを気に入ってくれなかったら、あなたを傷つけることになるから言えなかった」
「ううん。でも急に声を掛けられてびっくりしたの」
「三人で食事に行ったんだ」
「うん。素敵なお店だった。お料理も美味しかったし」
「何を話したの?」
「お兄さんから家の店のことを聴かれたみたいで大変でしょうって、家も店をやっているから良く分かるって言ってくださった。それからあなたの小さい頃の話もたくさん聴いたわよ」
「えっ? 何を聴いたの?」
「気になる? それは秘密。息子の瞬をよろしくお願いしますって」
「そうだったんだ。きょう舞台が終わって、すぐドラマの撮影だったから電話する時間もなくて。終わったのが零時近かったから母さんたち来てくれてたの分かったけど、もうホテルで休んでるだろうし。ここに来て、もしもあなたが何も言わなかったら気に入って貰えなかったってことだから。両親とケンカしても勘当されても、あなたを守るって決めてたから」
彼の顔が涙で見えなくなった私を天使は思いっきり抱きしめてくれた。