彼・・・私の天使。
3
「あっそうだ。シャンパン冷やしてあるの。乾杯しない? 持って来るね」
グラスとシャンパンを持って来て
「初舞台、お疲れさまでした。カンパーイ」
「ありがとう。うん。美味しい」
「この味、覚えてない? 劇団合格した時、家のお店で飲んだ」
「同じシャンパンなの? ありがとう。あの頃は、まだあなたは僕にとって憧れの人だった」
「じゃあ今は?」
「僕だけの大切な人。一生懸けて僕が愛する人」
天使のキレイな目で、じっと見つめられて泣きそうだった。
「自分で聴いておいて、どうして涙ぐむの?」
「だって……」
「はい。じゃあ、もう一回、乾杯!」
二人でシャンパンを一本空けて……。
実は彼、本当に、お酒強くないみたいで、あっという間にソファーで眠っちゃった。
起こしても起きないしベッドまで運べない。ブランケットを掛けて、しばらく寝顔を眺めていたけれどソファーで二人は眠れない。
仕方なく、そっと、おやすみのキスをして一人でベッドに入った。
眠ろうとしたけどソファーで眠ってしまった天使が気になって、なんだか熟睡出来ずに浅い眠りのままウトウトしていた。
どれくらい時間が経ったのだろう。
夢の中なのか現実なのか……。背中に温もりを感じてウエストに温かい何かが絡みついた。
「眠ってるの?」
そのまま優しい寝息が聴こえ始めた。
まだ朝とは呼べない暗い空がカーテンの向こうに広がっていた。
二人が目覚めたのは、すっかり明るい陽ざしが部屋に入り込んでから。
私は意識はあるけれども、まだほとんど眠っている状態でウエストの温かい何かに触れて……。
ん? 天使の腕? 確か前にも思ったことがある。意外と大きな手で私の手はつかまれた。
「起きたの?」
振り返ると天使は、もう起きていたらしく
「おはよう」
私は、まだ目が覚めなくて……。
「眠いの……。いつからここに居たの?」
「夜中から」
「シャンパン飲んでソファーで眠っちゃったの覚えてる?」
「うん。実は、お酒弱いんだ」
「昨夜で良く分かった。どうやって起こしても起きないから」
「まだ目が覚めない?」
「うん。よく寝てないから……」
「じゃあ、もう少し眠ったら?」
天使の腕の中に、すっぽり納められて、そのまま眠ってしまった。どれくらい眠ったのか……。
目を覚ますと天使のキスが降ってきた。
「昨夜、ベッドに一人で寂しかった? 埋め合わせだよ」
彼の腕の中で優しさに身を任せていた……。