彼・・・私の天使。
記者会見
1
そんな日々が続いて十一月も終わり十二月。ドラマの撮影は最終段階。今回は脇役だったのでアップも早かった。
そして天使には次のドラマの仕事が来ていた。
初めてのドラマに出演した時の監督から是非にと一月からのドラマの主演のお話が。年内にはドラマの撮影も始まり、年が明けてドラマの制作発表の記者会見。
天使は華やかな場所の中央に居た。
ドラマの設定や役柄の発表、監督、出演者の挨拶の後、記者からの質問。
ひと通りの質問の後、天使に個人的な質問が……。
以前スポーツ紙に載った女優さんとは、その後いかかですかと。
天使は
「彼女は才能のある素晴らしい女優さんです。でも僕には、この世界に入る前から僕を支えてくれた大切な人が居ますから」
記者会見が終わって撮影現場。
「監督、きょうの僕の撮影は二十一時からですよね?」
「う~ん。その前のシーンが押しそうだから二十二時位になるかもしれんな」
「じゃあ、すみません。それまで少し出て来てもいいですか?」
「いいぞ。二十二時までに戻れば。ちゃんとキメて来いよ」
「えっ?」
「プロポーズに行くんだろう? 男というものは、ちゃんとキメるべき時にはキメないと。家なんか今だに言われてるんだ。私はプロポーズして貰ってないって。二十年も経ってるのにだぞ。信じられるか?」
「そうなんですか」
彼は監督ご夫妻を微笑ましく思っていた。
「早く行って来い。ワイドショーが始まるぞ」
茶目っ気たっぷりの監督のウインクに送られて
「はい。ありがとうございます。監督、いってきます」