ひと雫おちたなら

できることは、彼が望むことをするくらいか。


私はそんなたいそうな顔でもなければ、たいそうな体型でもない。
いたって普通。とにかくいたって普通。
髪型も、普通のロングヘア。


「俺ねえ、ゆかりさんがホールに出る時にぐるぐるっとあっという間におだんご作るよね?あれ、わりと好きで」

「え、じゃあ結んだ方がいい?」

「うーん、いや、下ろしたままでいいよ」


睦くんはそう言って、数メートル離れた私をじっと観察していた。

妙に緊張して、なんとなく力が入って座り方までいつもと違うようになってしまう。
ついでに表情もこわばる。

すると、彼の不満げな声。


「……肩の力抜いて。顔も、いつもの気の抜けたやつがいいな」

「さりげなくけなすのやめて」

「けなしてないよ。事実を伝えてるだけ」


地味に傷ついていることなど、知るよしもなかろう。



彼のこだわりで、ちょうど十五時半から十六時半にかけての夕陽が差し込む時間帯で引き受けた。

真横から西陽が私の身体を包み込むものの、暑くはない。
室内が寒いから、むしろちょうどいいかも?

できれば白い服で、というリクエストに応えて、コットンの白いシャツワンピにデニムを合わせた服でイスに座っている。

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