ひと雫おちたなら

エリック・サティの『ジムノペディ 第1番』だ。


ゆったりと始まったその曲は、まるでぴんと張った水にひと雫ずつ粒が落ちていくみたいに、一定のリズムで繰り広げられていく。

時にすんなり、時に不穏に、時に優しく。

粒が落ちるたびに、水面は揺れる。
溢れそうになる。
だけど、溢れない。

ぎりぎりのところでこぼれずに、ひと雫ずつ受け止めていく。

不思議な曲だな、芯がないようでいて、強くて動かない芯が真ん中にあるみたいな。


技術面や専門的なものは知らないので感覚的にしか聴けないが、睦くんが好きで聴いている曲だからこそ特別な曲に感じた。



最後の曲は、同じエリック・サティの『ジュ・トゥ・ヴ』

作曲家は同じでも『ジムノペディ 第1番』とはまったく違う印象だった。


明るくて、飛び跳ねていて、くるりと回転する。
楽しくて仕方ない、と聞こえてくるような。

なんだか、私の今の気持ちとマッチしてるみたい。本当に踊り出したくなるくらい、今がとても楽しくて幸せだから。
そんなこと、睦くんに言ったらまたバカにされるだろうから言わないけれど。



ねえ、睦くん。

どうして私が今、とても楽しくて幸せなのか知ってる?
私はね、その理由に、最近気づいたんだよ。








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