【超短編】壁
もしかしたら、今までもそうだったのかも知れない。
君が初恋をしたあの日から、二人の間には男女の壁ができたんだと思う。
出来たと言うより、僕がようやくその存在に気付いたと言うべきかも知れない。
とにかく、超えようと思えば、いつでも超えられる低い壁。
そんな低い壁すら、超える勇気がなかったのは僕だ。
この18年間、僕の中に女の子は君一人で、君が女の子と言う生き物の基準だった。
あまりに近すぎて、家族の様な感覚もあったが、家族に対しては持たない独占欲もどこかにあった。
幼いながら、意地だとか体裁だとか増せた気持で、その気持を僕自身が抑圧してきたのだ。
君と並んで歩きながら、また物思いに耽る僕の頭の中にある霧が引いていくのがわかる。
18年間、悶々と立ち込めた濃い霧の中には、
ずっと、君が好き―
と言う単純な思いしかなかった。