【超短編】壁
「ずっと、怖かった。そうなったらどうしようって。」
あまりの急展開に呆気にとられる僕を傍目に君は続けた。
「だけど、あなたと距離を置くことも出来なくて…」
君の声が微かに震えている。
「気持になんとなく気付きながら、それに甘える様な態度をとったりして…私はずるいの。」
そこまで言うと、君は顔を両手で押さえた。
君が鼻をすする音が、冷たい空気の中、やけに響く。
肩を振るわせて、小さく丸まって、君は泣いていた。
泣きたいのはこっちだよ。
そう思いながらも、君が感情的になるにつれて、僕は落ち着きを取り戻していった。
君が言ったとおり、こんな時まで、君はずるい。
泣くなんて、ずるいよ。
そして、やっぱり、君は女の子なんだって実感したよ。