【超短編】壁
「泣くなよ。なんか、俺が惨めになるだろ。」
「…ごめん。」
「俺、どうしたらいいかわからないじゃん。」
「…ごめん。」
責めるつもりはない。
きっと、今の君はこう言って欲しいだろうと思うから言う僕もずるい。
「これからも、友達で…。」
途中まで言って、彼女は言葉につまった。
僕にとっては凄く残酷な言葉だが、二人にはこうするしかなかった。
「これからも友達でいような。実際、俺も恋愛感情なのかよくわからねぇし…」
なんて、散々悩んで、違うって確信した事を、敢えて口にする。
「ありがとう。」
君は笑った。
今まで、見たことのない顔で。
その笑顔までを、ずるいなんて感じてしまうのは、フラれたばかりの男の捻た考えからだろうか。