上司との同居は婚約破棄から
2.寝耳に水
定時に上がった私は間違えないように帰り道を歩く。
今朝、起きた時には高宮課長は見当たらなくてテーブルに書き置きがあった。
会社までの地図。
それにマンションの合鍵。
そして朝食。
書き置きというには語弊があるかもしれない。
必要最小限のものが置かれているだけで私への伝言的なものは何もなかったのだから。
高宮課長は社内でも仕事が出来て一目置かれているような人。
整った顔立ちと優秀な仕事ぶりで既婚者にも関わらずファンは多いらしい。
直属の上司で羨ましがられることもあったけれど、私は苦手だ。
背の高い身長は見下されてるように感じるし、整った顔立ちも冷たく感じるだけだった。
厳し過ぎる指導に幾度となく枕を濡らすことを余儀なくされた。
そこまで考えて溜息を吐く。
溜息を吐けるだけ元気になっている証拠かもしれない。
図らずも昨晩、今朝と続けて食事をとれたのだから。