上司との同居は婚約破棄から
「もしかしてここに住み続けているのは彼女が戻ってきてくれると思ったからですか?
ずっと、ずっと好きだったんですよね?」
私の問いかけには高宮課長は答えてくれなかった。
「順を追って話すから。
我慢して聞いてくれ。」
そう言われたら口を噤むしかなかった。
「2年前、彼女に雰囲気が似た女の子が入社した。」
2年前、、入社って、まさか。
「その子は内田藤花と名乗った。
仕事が出来なくて、それなのにいつも笑ってて頑張り屋だった。」
私はなんて言えばいいのか分からなくて高宮課長をただ見つめていた。
高宮課長は柔らかな表情で話した。
「内田はなんていうか、小動物みたいでな。
ヘマをするから叱るんだが叱ってもめげなくて、可愛い部下だった。
恋なんて言えるものじゃないが、今思えば特別な感情は抱いていたかもしれない。」
そんな、まさか、、。
驚いて目を丸くすると、高宮課長は優しく微笑んで私の頭を2、3度撫でた。
微笑ん、だ。優しく微笑んだ。
私のこと話して優しく微笑んだ。
胸がキューッと痛くなって涙がこぼれそうになった。