上司との同居は婚約破棄から
社用車に乗り込むと風が遮られるだけで暖かい。
エンジンをかける高宮課長に言葉を漏らした。
「ここに、連れてきて下さったのは私に勉強しろって言いたい為ですか?」
ハンドルを握る高宮課長はこちらを見もせずに口を開いた。
「内田のことだ。
「アンケートを取るのなら商業施設を建てるすぐそばで取らなきゃナマの声がきけません!」とか言うだろうなと思ってな。」
図星を突かれてぐうの音も出ない。
現実と理想。
現実を知らない私は理想ばかりを口にしただろう。
高宮課長はそれを分かってて……。
「ま、普段からプロジェクトに関わってる奴らが忘れてるような発想はプロジェクトを考える上でも重要だ。」
しおれていく気持ちと一緒に下がっていた頭を上げて高宮課長に質問を向けた。
「だから私をプロジェクトメンバーに引き入れたんですか?」
「……さぁ。どうかな。
慣れていないからこそ内田には忌憚ない意見を述べて欲しい。」
忌憚ない意見……遠慮せず恥ずかしい意見も言えってこと……だよね。