上司との同居は婚約破棄から

「中学生じゃあるまいし、こんなことで照れられるとこっちが照れる。」

「え?」

 言われて再び顔を上げると口元を片手で覆った高宮課長が顔を赤らめてバツの悪そうな顔をさせていた。

「意外過ぎるんで、高宮課長こそ照れないでくださいよ。」

「うるさい。
 赤い顔の熱を引かせてから文句を言え。」

 よく分からない八つ当たりをされて笑う。
 けれど相変わらず高宮課長は笑わない。

「高宮課長。笑ってくださいよ。
 今にも人を殺めそうな顔をされてるとこっちが困ります。」

 茶化したつもりだった。
 今日の私はどうかしてたんだと思う。

「上手く、笑えないんだ。」

 どこまで……。

 再び茶化そうと思った私は言葉を失った。
 高宮課長の顔を見て胸が締め付けられた。

 冗談で言ったんじゃない。
 本当に苦しそうな顔。

 テレビではドラマが始まっていた。
 とてもじゃないけれど内容は頭に入ってこなかった。

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