上司との同居は婚約破棄から
何の外回りなのか、分からないまま車に乗り込むと感心したように言われた。
「内田の斜め上からの発言には驚かされる。」
「………馬鹿にしてますよね?」
「いや。そんなことはない。
どんなに叱責してもへこたれずに次の日も出社する。
食らいついてくるお前には脱帽する思いだよ。」
「馬鹿にしてるじゃないですか。」
今にも涙が溢れそうな私は思い出話を口にした。
「私、子どもの頃、商業施設に置いていかれたことがあるんです。」
黙ってしまった高宮課長に続けて打ち明けた。
「自分は迷子の自覚もなくて。」
「………そう。」
深刻な面持ちの高宮課長に明るく告げた。
「大丈夫です。
普通に今は仲いいですから。」
けれど置いていかれたと思うにはそれなりの理由があった。
話し始めてしまうと止められなかった。
「うちには出来のいい兄がいるから。
だから私はいらない子だったんです。」
ずっとその思いは拭いきれなくて。