上司との同居は婚約破棄から
9.前後不覚
玄関が開いた音で目が覚めて、下がドタドタとなんだかいつになく騒がしい。
気になって降りてみた。
玄関で壁にもたれかかって座っている高宮課長を見つけて驚いて駆け寄った。
「こんなところで寝たら風邪を引きますよ?」
体を揺さぶるとお酒くさい。
接待か何かだったのか、相当飲んでいるみたいだ。
腕を伸ばした高宮課長に抱き寄せられてドキリとする。
「た、高宮課長?」
どうしたんだろう。
酔ってるからって………。
「みー。
俺はお前がいないと笑えないんだ。」
みーって……。
もしかして奥様?
酔って私を奥様だと勘違いしてるの??
慌てて「内田です。部下の内田藤花です」と言おうとした声は力を込められた高宮課長の腕に遮られた。
「上手く笑えないんだ。
あいつが俺の前から居なくなってから俺は上手く笑えない。
あいつがいなきゃ………。」