上司との同居は婚約破棄から
「高宮課長……。」
酔って前後不覚になってるんだ。
じゃなきゃこんな弱音も吐いたりしないだろうし、奥様と間違えてるような、私へ言っているような、よく分からない発言はしないと思う。
「俺は俺のままで良かったのに。
笑うことが出来なくなった。」
ギューッと胸がわしづかみにされて涙が出そうになった。
それでも高宮課長の腕の中は温かくて、高宮課長の胸に顔をうずめた。
高宮課長の手が私の頭に添えられて、顔を覗き込まれた。
近づいてくる顔を避けることも腕を振り払うことも出来たと思う。
けれど私も寂しくて高宮課長の温もりに甘えた。
恋なんてしないつもりだったのに。
こんな慰め合うみたいな真似、あり得ないのに。
佳乃ちゃんに言われた「その人のこと知りたいって思ったのならそれは恋の始まりじゃない?」って言葉がどうしてか頭を過ぎっていた。