上司との同居は婚約破棄から
11.リハビリ
1人で抱えることが出来なくて伊織課長の家にお邪魔していた。
伊織課長というよりも正しくは愛梨さんになんだけど。
「騙した方がいいと言われたんですけど、結局は主導権はあっちです。」
せっかくのアドバイスも生かせないまま。
愛梨さんは微笑んで言う。
「ごめんね。
一般的な恋愛について言ったのよ?
結果オーライだからいいんだけど、俊哉くんにはストレートの方がいいかもね。」
高宮課長にはストレートがいいだなんて……。
「どこがですか!全然ですよ……。」
「捻くれちゃってるからね。彼。」
高宮課長のどの部分が捻くれてて、どの部分が真っ直ぐなのか。
それさえも分からないくらい、彼のことを何も知らない。
「大丈夫よ。俊哉くんはこれでもかってくらい誠実な人だから。」
そうなのかな……。
誠実な人が酔った勢いで奥様と間違えて、あんなこと………。
訝る視線を向けてみても愛梨さんは微笑むばかりだった。