上司との同居は婚約破棄から
12.デート
「顔色が良くなったな。
出掛けても平気か?」
「それは……。はい。」
やっぱり高宮課長はずるい。
意地悪をしたかと思えば優しい言葉をかけたりして……。
休み前、高宮課長に心配されて早く帰されてゆっくり休んだ。
その後に嵐のような出来事があったはずなのに、悩んでいるというよりもどこか吹っ切れていて心は軽い。
婚約破棄されてから、いくら前を向こうと思っても出来なかったのにな。
「それならどこか出かけよう。
真似事でもデートらしいことをしてみようか。」
「デートって……。」
「いいから準備しろよ。」
高宮課長のお陰で元気になれて、高宮課長のちょっとした行動に一人、動揺されられて。
好きになった自分のせいなのにどこか悔しくて、離れていこうとする高宮課長の腕を引いた。
本当は不意打ちでキスくらいしてやりたいのに、緊張で腕にしがみつくのが精一杯だった。
「な、なんだよ。」
上擦った声を聞いて少しだけ気が済むと「私のことを好きになってもらうおまじないです」と誤魔化して手を離した。
本当にそうなればいいのに。
頭をかきながら去っていく後ろ姿をぼんやりと眺めた。