上司との同居は婚約破棄から
タイミングがいいのか、悪いのか。
三連休の初日。
「この際、小旅行にでも行こう。」
そう言われて高速道路を走っている。
春までには次に住む場所をって。
春っていつのことだろう。
3月の三連休。
言う人によっては今だって春だし、4月が春っていうのならもう数週間しかない。
せめて初夏にしてくれればいいのに。
「車酔いしたか?」
思わぬ気遣いに首を左右に振った。
もういいや。今を楽しもう。
ずっと1人でいいって思った人生。
この先、高宮課長へ片思いになるとしたとしても。
男の人、全部を避けて嫌って生きていくよりもきっとずっと幸せだ。
そう思うと心が軽くなって隣の高宮課長へ笑いかけた。
「なんだ。急に。
よく笑う奴だよな、その、藤花は。」
急に名前で呼ばれてキュッと胸が痛くなる。
「ずるいです。不意打ち。」
「は?何が。」
「いいえ。俊哉さんカッコいいなぁって言っただけです。」
「バッ……。
頼むから運転中の軽口は謹んでくれない?」
不平を言う高宮課長からそっと視線を逸らした。
本当にかっこいいんだもん。
嫌になっちゃう。