上司との同居は婚約破棄から
着いたのは牧場に併設されたふれあい広場や農業体験が出来る施設。
「のどかでいいところですね。」
「あぁ。」
「動物、好きなんですか?」
「ん?まぁ。
藤花が好きそうだなぁって。」
「はい!好きです。」
どんな冷血ロボットかと思っていたのに、実際は彼女になる人には優しいんだなぁ。
嬉しいはずなのに、少し胸の奥が痛い。
あんなことになったのに、高宮課長はやっぱり『みー』って呼んでいた奥様のことが忘れられないのかな。
私は所詮、仮の彼女。
別れが決められている。
「藤花。えさやり体験だそうだ。」
「やりたいです!!」
入り口にあったスケジュール表を見ると乳搾りにバター作り、押し花作りなんかもある。
「わぁ。楽しそうですね。
全部やりたくなっちゃいます。」
「時間が許す限り楽しめばいい。」
顔を上げるとまた柔らかな表情の高宮課長と目が合った。