微笑みの下の隠しきれない想い~アナタは渡さない~

「待て、俺が食べるのを待っててくれないか。」


彼の何気ない一言は私を期待させて


「そろそろ戻らなければ晩餐の仕度に
遅れてしまうので。」


「ザザは優秀なコックだから大丈夫だろう。
そんなに急いでるなら食べさせてくれればいい」


なんて意地悪なことをいうの?


そうやってからかって楽しんでるのは


王子だけなのに


私は驚いて恥ずかしくなってしまう


「ごゆっくりどうぞ。時間の許す限り
ここで待っていることにします。」


「そんなに照れなくてもいいじゃないか。やっぱり
シェリーのりんごのコンポートはおいしいな。
一気に疲れが飛んでいくよ。ありがとう」


急に優しくお礼を言われると困ってしまう


「別に特別な作り方ではないので誰が作っても
同じだと思います。
それにもっと栄養のあるものを食べて
元気になってください。」


なんで素直にどういたしましてって言えないのだろう


その一言が言えなくていつも後悔しながら帰るのに


「俺はシェリーのだって分かる自信があるぞ。
君が俺のために甘さ控えめで作ってくれて
いるのも知ってる。」


「喉か痛いだろうからって冷やして持ってきて
くれているのも知ってる。口に出さなくても
俺は君の優しさを知ってるよ。」


嬉しい、、、やっぱり


ずっと好きな人に言われたのだから


いつも本当は王子専用のレシピで作っている


疲れがたまっているだろうから油は使わずに、


一口サイズよりさらに小さくして作る


それを本人が分かっていたとは嬉しいけど


知らなかった


「そんなの知りませんでした。
ですが、おいしかったのなら良かったです。
作ったかいがありました。」
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