キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「利律子さん。どうぞ」

保科さんが手渡してくれたカップからは仄かに、甘いリキュールの薫りがする。
彼の微笑みと同じくらい優しい甘さの、大人のホットミルクが。きゅっと縮こまってた躰の芯を、じんわり温めて解してくれる気がした。


「・・・・・・ミチルさんて彼と、何かあったの?」

半分ほど減ったマグカップを両手で包み、ぼんやりそれを見つめるあたしに睦月さんは穏やかにそう訊いた。

話しても。どうにも出来ないのは分かってる。
話さなくても、睦月さんは問い詰めたりしない。
だけど。
わざわざ泊めてくれたのは、あたしを泣かせてくれる為だ。
ミチルさんの傍で泣けないあたしに気付いて、助けてくれた。
何ひとつ打ち明けずにおくのは、心配してくれる睦月さんと保科さんの厚意を無下にすることだから。

あたしは、ゆるゆると胸の内で息を整え。
伏目がちに口を開いた。
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