キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「結婚しよう・・・って、言われたんです・・・・・・」

女の子だったらどんなにか待ち焦がれて。まばゆい未来を夢見る、希望の言葉。

あの時のあたしには。絶望に砕かれた音しか。・・・聴こえなかった。

言ったあと信号待ちであたしを見つめたミチルさんの眼差しは、愛おしさでも抱擁でもなく。決意を秘めたような強かな光が宿り。

ああ、そっか。

分かってしまった。それがミチルさんの、『親友』としてのお兄ちゃんへの責任の取り方なんだ、・・・って。

お兄ちゃんを心で永遠に想いながら、妹のあたしを愛する努力を誠実に果たそうって。

そうするしか。お兄ちゃんと繋がっていられないから。
あたしは、ミチルさんとお兄ちゃんを繋ぐ唯一の楔(くさび)だから。
絶対に手離さなくて済む一番の方法は。あたしと結婚すること。だから。


「・・・・・・ミチルさんに一生、嘘を吐かせ続けるなんて・・・。そんなのしたくないのに、・・・他にどうしていいのか分からない。・・・あたしはミチルさんと離れられないから・・・・・・」

鼻の奥がつんとして、じわりと涙が滲んだ。

「淳人さんが知ったら・・・きっとミチルさんを赦さない。・・・二人が友達じゃなくなったら、お兄ちゃんだってどんなに」

そこまで言って言葉が詰まる。
込み上げてくるものを必死に堪え、顔を歪めた。

「・・・・・・妹で良かった。ずっと、今のままで。でも・・・もう、元にも・・・戻れない・・・っ・・・」

震える声を振り絞り、あたしはまた涙を溢れさせる。



『ずっと一緒にいよう』

ミチルさんのその一言だけで。あたしは、どこにも行かないのに。
どうして。



信じてくれなかったの・・・・・・?
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