キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
保護者との会話って言うより、新婚さんみたいだなって。苦い笑いで通話を切った。
家のこと済ませたら買い物も行かなきゃ。リクエストのレンコンと、あとはスーパーの特売品と相談で。

テーブルの上に戻した、無機質なスマホの真っ黒い画面をぼんやり見下ろす。

『声が聴きたくて』
『りっちゃんがいないと』

甘くて優しい檻に囲まれた。気がする。
どこにも行っちゃだめだよ。
・・・扉に幾重にも巻き付いた鎖。


・・・大丈夫だよ、ミチルさん。

あたしはちゃんと、ここにいるよ。

変わってなんかない。

淳人さんのことは。もう。


毎晩、抱かれるのも。信じて欲しかったから。
結婚って枷を自分の足に嵌めてまで、あたしを繋ごうするミチルさんの。
望みだったから、ただ。


『りっちゃん。結婚しよう』

『・・・・・・いいよ。ミチルさんがそうしたいなら』


歪みそうになった眸を堪えるように、あたしは静かに目を伏せる。


あの時、本当はどう応えれば良かったの。
黙ってないで・・・ねぇ教えてよ、お兄ちゃん・・・・・・。



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