キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「それでも僕は。・・・黒を白に塗り替えてでも、りっちゃんに綺麗なものだけ見せたいんだよ」

確かに聴き取れた言葉が淳人さんとどう関係があるのか、何が言いたいのか。
いきなりミチルさんがまるで分からなくなって、狼狽えた。
知らない人に見えて。・・・そんなこと初めてで一瞬、自分が怖くなった。


いつしか片側2車線のバイパス道路に乗った車は、帰宅時間に重なってそれなりに連なるヘッドライトの合い間を、縫うように車線変更をしながら前へ前へと進んでく。
見慣れない光景で、どこにどう向かってるのか。
膝の上できゅっと両手を握り締め、だけどあたしは何も問い詰めなかった。
黙って隣りに座ってた。

ミラーに流す視線の動き、ハンドルの切り方、ミチルさんは冷静だった。
辿り着く先がどこでも。あたしが信じないで、どうすんの。
祈るように。ココロに言い聞かせてた。


しばらくして市街地に差し掛かると車も詰まり始め、赤信号に引っかかった時。肩で小さく息を吐いたミチルさんは、深い眼差しをあたしに降り向けて、静かに言った。

「・・・淳人に電話してくれるかな。りっちゃん」
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