キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
お兄ちゃんの代わりにあたしも、ミチルさんの傍にずっといるよ。
ココロの中で膨らんだ切なさが、喉元まで出かかって。
ちょうど運ばれて来たお料理に、口の中で熔けて消えた。
「・・・リツ。ここの料理長の腕は、天下一品だぞ」
それまで漂ってた空気を払うように、淳人さんに声を掛けられ、その時やっとまともに顔を合わせたことに気付く。
わざわざ、贈ったネクタイをしてきてくれたコトも。本当は嬉しかった。
口角を上げ淡く笑んだ彼に、想いを込めてあたしも小さく笑み返した。
それからは、一品一品、仲居さんの丁寧な説明付きで並べられてく芸術的な和会席に舌鼓を打ちながら。さっきの嵐みたいな気配を無かったことにして、穏やかに食事は進んだ。
ミチルさんと淳人さんの間の会話は少なかったけど、どっちからともなく二人から話しかけられては返して、あたしから広げる。
共通の話題って言ったら、やっぱりお兄ちゃんで。高校時代のヤンチャぶりを淳人さんが色々と暴露してくれ、目を丸くしたり呆れたり。
「淳人と隆弘をバラバラにしてもロクなことにならないって、学年主任が僕に面倒を押し付けて、三年間同じクラスにされたしね」
ミチルさんが箸を置いて、溜め息雑じりに言えば。
「・・・ああ。出席番号も近いお陰で、たいがい一緒だったな。あいつが俺を構うから、お前は俺が嫌いなんだろう?」
エッ、それって言っていいヤツ?!
淳人さんがお猪口を口に運んで、平然とものすごい爆弾を投下した。
思わず石になったあたしを他所に、ミチルさんも素っ気なく言い放つ。
「気が付いてたなら、良かったよ」
・・・・・・・・・お兄ちゃんは、鈍感だから気付いてなかっただろうなぁ。
この二人って、もしかして昔からこんなカンジだったんだ。
甘味で出されたお抹茶の汁粉をそっと漆塗りのスプーンで掬いながら、ぼんやり思った。
それでも信頼関係があるからこそ、言いたいことを言い合えるのかも知れない。
だからこそ。
譲れないものは譲れない。・・・水と火なんじゃないか、って。
ココロの中で膨らんだ切なさが、喉元まで出かかって。
ちょうど運ばれて来たお料理に、口の中で熔けて消えた。
「・・・リツ。ここの料理長の腕は、天下一品だぞ」
それまで漂ってた空気を払うように、淳人さんに声を掛けられ、その時やっとまともに顔を合わせたことに気付く。
わざわざ、贈ったネクタイをしてきてくれたコトも。本当は嬉しかった。
口角を上げ淡く笑んだ彼に、想いを込めてあたしも小さく笑み返した。
それからは、一品一品、仲居さんの丁寧な説明付きで並べられてく芸術的な和会席に舌鼓を打ちながら。さっきの嵐みたいな気配を無かったことにして、穏やかに食事は進んだ。
ミチルさんと淳人さんの間の会話は少なかったけど、どっちからともなく二人から話しかけられては返して、あたしから広げる。
共通の話題って言ったら、やっぱりお兄ちゃんで。高校時代のヤンチャぶりを淳人さんが色々と暴露してくれ、目を丸くしたり呆れたり。
「淳人と隆弘をバラバラにしてもロクなことにならないって、学年主任が僕に面倒を押し付けて、三年間同じクラスにされたしね」
ミチルさんが箸を置いて、溜め息雑じりに言えば。
「・・・ああ。出席番号も近いお陰で、たいがい一緒だったな。あいつが俺を構うから、お前は俺が嫌いなんだろう?」
エッ、それって言っていいヤツ?!
淳人さんがお猪口を口に運んで、平然とものすごい爆弾を投下した。
思わず石になったあたしを他所に、ミチルさんも素っ気なく言い放つ。
「気が付いてたなら、良かったよ」
・・・・・・・・・お兄ちゃんは、鈍感だから気付いてなかっただろうなぁ。
この二人って、もしかして昔からこんなカンジだったんだ。
甘味で出されたお抹茶の汁粉をそっと漆塗りのスプーンで掬いながら、ぼんやり思った。
それでも信頼関係があるからこそ、言いたいことを言い合えるのかも知れない。
だからこそ。
譲れないものは譲れない。・・・水と火なんじゃないか、って。