キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
7-1
朝が来るごとに、冬が北の方へと後退りしてく。
風が温んで、自転車こいでても首を竦める朝晩が少なくなってって。
桜も。開花宣言を耳にしてから満開まであっという間だった。

今年のお花見は、二回。
一度目は仕事の後。睦月さんと保科さん、羽鳥さんと四人の複雑な取り合わせで、桜祭りが開催されてる川沿いの夜桜を見に。
ぼんぼり提灯が桜から桜に渡され、それがずい分先まで伸びてた。
並んだ屋台の照明と提灯の明かりに浮かぶ、白い花盛りの並木をゆっくり堪能してから、帰りに居酒屋さんで少し飲んだ。

四人掛けの席に向かい合った、保科さんと羽鳥さんをちょっぴり見比べちゃうとやっぱり、保科さんの存在感は圧倒的で。落ち着いた物腰とか、薫るような微笑みとか、知性や包容力に溢れた美貌とか。“オトナ”の次元が段違いだって思った。
それでも羽鳥さんは、堂々と挑んでるように見えた。睦月さんを諦めなきゃダメな時も、潔いんだろう。
・・・吹き抜ける春の嵐に一瞬で散らされる、桜みたいに。




それから、二度目はミチルさんと。
天気も良くて、絶好のお花見日和だった。
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