キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
何もしてやれなかった。
ミチルさんの声には、後悔が滲んでた。

そんなことないよ。
言おうとして、飲み込む。代わりに。

「・・・・・・ありがとう、ミチルさん」

口を付いて出た言葉。

「お兄ちゃんと出会ってくれて・・・」

唐変木は死んでも治ってないだろうから、今ごろ空の上からこっちを覗き見して、熱い友情だって感激してるかもしれないけど。

「他人に弱音なんか吐いたことないお兄ちゃんが、そんな風に自分を見せられたのって、きっとミチルさんだけだよ。・・・・・・嫌いな雪が降り続けても独りじゃないって、お兄ちゃん、ミチルさんだからそう思えたんじゃないかな」

お兄ちゃんにとって、ミチルさんはかけがえのない大事な、親友以上の親友だった。

「ミチルさんが思ってるよりずっとね、あたし達はミチルさんにいっぱい掬われたよ・・・? 言葉に出来ないくらい助けてもらったし、支えてもらった。お兄ちゃんは、ミチルさんの為だったら何だって出来たくらい、ミチルさんを」

そこまで言って、続かなくなった。

あたしを抱き締めてる彼の身体が微かに震えて、殺すような嗚咽を聴いたから。

お兄ちゃんが死んだ後も。泣けずに、悲しいのも苦しいのもぜんぶ自分の中に閉じ込めちゃったミチルさんを、傍で見てるだけなのがずっと辛かった。

ほんのちょっとでも。今度はあたしが。
ミチルさんに降る雪を溶かしてあげたい。

降る雪が止まないなら。
一緒に。凍えるよ。

お兄ちゃんを一途に愛するミチルさんを、やっぱり大好きなままのあたしで。
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