キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
ぐっと噛み締めて堪えてたものを、詰めてた息と一緒に吐き出すように。
ミチルさんが低く呻いた。

「・・・・・・違うよ、りっちゃん・・・。いつも、・・・いつだって僕の方が救われれたんだ、・・・二人に。そんな風に言ってもらえる資格なんか・・・僕にはないんだよ・・・・・・」

悲しそうな声が、あたしの胸に刺さって。躰中に行き渡ってく。毒に冒されてくみたいに。苦しさに苛まれてく。

どうしてそんなに痛そうなの・・・?
どこが痛いの? なにが辛いの。
ミチルさん、・・・ねぇ教えて。

頭を上げようと、腕の中で小さく身じろいだ。
でも、あたしを閉じ込めてる腕が緩むことはなかった。

「・・・本当はね、淳人の言うとおりなんだよ。隆弘の為でもりっちゃんの為でもない自分のエゴで、りっちゃんを僕に縛り付けてる。・・・りっちゃんの気持ちを利用して、どこにも行かせないんだ、・・・僕が」

まるで、自分で自分を引き裂いてるみたいな苦渋と自嘲がうねった響き。
ひと言だって聴き洩らしちゃいけない気がして、ただ必死に耳をそばだてる。

「手離してあげるべきなのを知ってて僕は、言うんだ。・・・卑怯だから」

腕から少し力が抜け、あたしはおずおずと胸元から顔を上げた。
ゆらゆらと揺れる眸に見つめられてた。
色んな何かを刻みこんだ色をしていた。

「・・・・・・隆弘がいなくなって、りっちゃんがいないと僕は生きていけない。だから一生、僕だけのものだよ、・・・って」

触れたら無くなりそうな微笑みが、あんまりに頼りなさげで。
手を伸ばして、掴まえたい衝動に駆られた。
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