キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
ふとミチルさんの体温が離れた。
セカイが巻き戻った感覚。鳥のさえずり、春の匂い、息吹。いっぺんに。

頭の中で彼の言葉が廻ってる。
自分を卑怯だと告白して。・・・責められたがってるように聴こえた。
違うよ。
ミチルさんがそんな風に思うことなんて、ない。

「・・・あたしがミチルさんと居たいのを『利用してる』って思うなら」

真っ直ぐに目を合わせて言った。

「利用されてるのを、あたしも利用してるのと同じだよ、ミチルさん。お兄ちゃんを口実に、ミチルさんは絶対にあたしの傍にいてくれるって思ってるもん」

それから口許を小さく緩めて見せると、ミチルさんは僅かに目を見張る。

「他の誰のものにもならないでくれたら、それでいいってズルイこと考えてるのは・・・、あたしの方なんだから」


初めてだった。
こんな風に自分の気持ちを曝け出すのは。

何かを言って壊したくない思いが、ずっと強かった。
だけど臆病なだけ、ミチルさんが傷付いたままでいるのは耐えられない。

思った時には、口を開いてた。頭で考えるよりも先に。
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