キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
出かける支度を整えて、2階からリビングへ下りる。

「ミチルさん、お待たせ」

軽く声をかけると、ソファでノートパソコンを広げた、スーツ姿の彼がこっちを振り返った。
一瞬、視線が縫い留められ。それから目を細めて、ふわりと薫るような微笑みを浮かべる。

「すごく可愛いよ、りっちゃん」

「ありがと」

はにかんで返すあたしは、ちょっとフォーマルなワンピースドレスをお披露目。

立ち襟の襟元からバルーンスリーブにかけては、小花模様のレースで。少し絞ったウエストには、アクセントリボンがあしらってある。
膝丈のスカートはサテン地だし、黒でもそれほど落ち着きすぎた印象にはなってないと思う。

「たまにはお兄ちゃんに、こういうカッコも見せてあげようと思って」

照れ隠しで、わざと悪戯っぽく。

覚悟を見せたかった。なんて言うと大袈裟かも知れない。
でもお兄ちゃん、昭和のオヤジみたいだから。きっとこう言うの、ちゃんとしないと納得しない。
妹心をきちんと受け取ってよ?、お兄ちゃん。
それで泣かせたら、ごめん。
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